あなたは「止める・呼ぶ・待つ」を知っていますか?
「止める・呼ぶ・待つ」は工場で働くなら理解しておきたい超重要な考え方。
自動車関連工場に勤めた経験がある方は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
トヨタをはじめ、主に製造ラインの現場で広く採用されていて、市場に不良品を流失させないための対策のひとつ。
入社時の研修の際に叩き込まれることが多く、座学、実技で重点的に学び現場に配属されます。
製造ライン作業中に
「いつもと違う気がするけど、このくらいは大丈夫だろう」
の自己判断は厳禁です。
止める・呼ぶ・待つを実践できないと、最悪の場合不良品が市場に出回るリスクがあります。
大規模リコールや重大事故を防ぐ意味でも、作業者を守る意味でも「異常を感じたらすぐ止める」は超大事。
本記事ではライン作業者の立場、視点から止める・呼ぶ・待つの重要性を解説します。
これから期間工などのライン作業に挑戦しようと考えているならぜひ最後まで読んで「止める・呼ぶ・待つ」の重要性を確認してください。
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ライン作業の基礎知識「止める・呼ぶ・待つ」とは?
「止める・呼ぶ・待つ」について詳しく解説しますね
はじめて耳にする人のために、「止める」「呼ぶ」「待つ」の各項目を分解して解説します。
止める
「止める」は設備の停止、または作業の停止を意味します。
稼働中の設備に処置を行うのは危険。災害防止のためにもまずは設備を止めることが重要です。
異常処置の初動は“動いているものに手を足すな”が基本中の基本。
設備の「非常停止ボタン」やライン上部に設置されているロープ的なものを引っ張るなどのアクションを起こすことで機械がストップするように設計されています。
ボタンやロープなどで設備停止すると、自動的に異常処置者が駆けつけてくれる場合もありますが、設備を止めない程度の以上の場合は呼び出しボタンを押して異常処置者を呼ぶ必要があります。
呼ぶ
「呼ぶ」は異常処置者を呼ぶことです。
異常処置者は「ライン外」や「リリーフ」などと呼ばれ、異常を確認し、適切な処理を行い円滑に製造ラインが流れるように対応します。
異常処置者の手に負えない設備故障などの場合、保全との連携や関係各所への連絡などを行いライン再稼働の初期対応を行う面もあります。
異常を感じたら、設備を止めて、異常処置者を呼びますが、
おーい!ちょっと来てくれー!
と大声をだして異常処置者を呼ぶことは少なく、設置されている呼び出しボタンを押して知らせることが大半。
呼び出しボタンを押すと、アンドンが光り、スピーカーからメロディが流れて呼び出す仕組みを採用していることが多く、「ライン外」「リリーフ」などの異常処置者に知らせるようになっています。
呼び出しボタンを押したら異常処置者が来るまでひたすら待ちます。
待つ
作業を止め、異常処置者を呼んだら後は待つのですが実は「待つ」が超重要。
ラインを止めてしまっている罪悪感から自分の手で何とかしよう(改善・悪化防止)としたい欲求が自然と出てくるもの。
でも自分で異常処置に挑戦するのは絶対にやめましょう。自己判断で処置を行うと状況が悪化したり、その他の不具合を誘発させる恐れがあります。
ラインを止めてしまうとその分生産が遅れてしまうため、焦りの感情も出てきますが、異常を見つけたら作業をとめ、一切手を付けず異常処置者が駆けつけるまでひたすら待つしかありません。
しかし、製造ラインを止めるのはある種の勇気が必要です。だつ帽も、過去に止める・呼ぶ・待つをためらってしまう場面が何度もありました。
止めるのをためらう理由は“恐怖”
製造ラインを自分の手で停止させる恐怖
異常時に、製造ラインを止めるをためらってしまうのは何故でしょうか?
理由はいたってシンプルで“怖い”からです。
以下の理由で恐怖を感じ、止める・呼ぶ・待つをためらうことがあります。
・異常処置者の機嫌が悪い
・損失が発生する
・自分のミスがバレる
自動車関連の製造ライン経験者の方は共感していただけるのではないでしょうか。
では各項目掘り下げます。
異常処置者の機嫌が悪い
異常処置者は多忙です。
異常処置の他にも雑務が多く、常にいっぱいいっぱい。呼び出しが重なることも珍しくありません。
異常処置者も人間ですから余裕がないと機嫌が悪くなることもあります。
特に呼び出しが集中してしまうと心身ともに疲れ果てて、ピリピリした雰囲気を醸し出す処置者も珍しくありません。
よっぽど人間性が高くないと機嫌が悪くなりがちですが、止めるのも仕事なので気にしないことが大切です。
損失が発生する
工場の生産ラインは数分停止しただけで、とんでもない金額がロスするといわれています。
自動車の製造は自動化されており、工場は絶え間なく稼働しています。そのため、1分間の稼働停止で2万2000米ドル(約240万円)、1時間にすると130万米ドル(約1億4400万円)の損失が発生すると推定されています。
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2104/02/news013.html
そんな製造ラインを自らの手で止めるということは、かなり勇気がいることなのです。
いくら異常を感じたら止めてくれと言われても、ためらいの感情が生まれるのは自然なこと。
でも止めなければ、さらに大きな損害が出る可能性もあります。
“もしも”の時にためらいなく非常停止ボタンを押せるように、工場によっては非常停止ボタンを押すトレーニングを新人教育に盛り込んでいることもあります。
自分のミスがバレる
自分のミスが原因で異常が発生する場合ももちろんあります。
原因は自分なので異常処置者を呼んだらミスが発覚して注意されることもしばしば。
叱られたくない・注意されたくない心理で
「たぶん大丈夫」
「このくらいなら問題ない」
と自分い言い聞かせてそのまま後工程に流すパターン。
叱られたくない気持ちはマジで共感できますが、大抵の場合後工程や検査工程でバレるので、すぐに止める・呼ぶ・待つを実施して報告するのが最善です。
このくらい大丈夫の自己判断は絶対にやめた方がいいです。
「このくらい大丈夫」は厳禁!少しでも違和感を覚えたら止める!
リコールや死亡事故を防ぐためにも自己判断はNG!
一日何百台も同じ作業を繰り返していると
異常処置者の機嫌を考えるのも大事ではありますが、不具合を見逃して不良品が市場に流れるのを防ぐためにも少しでも違和感を覚えたら止める・呼ぶ・待つで異常処置者に確認してもらいましょう。
「たぶん、このくらいなら大丈夫だろう」
で後工程に流してしまうと大規模リコールや死亡事故が発生してしまう恐れもあります。
少しでも違和感を覚えたらためらいなく、止める・呼ぶ・待つを実行し、フィードバックを受けましょう。
「止める・呼ぶ・待つ」をしたら必ずフィードバックを受けよう
フィードバックを得て次に生かそう
止める・呼ぶ・待つを行ったということは製品、または設備などに異常を感じたからですよね。
でも異常に感じたことでも、結果的に異常ではなかった場合ももちろんあります。
この判断をするのがライン外やリリーフなどの異常処置者。
次に同じようなことが起きたとき、自己判断でライン作業を続行していいのか、それともライン外を呼んで対応してもらうべきなのか、対応をフォードバックしてもらいましょう。
次からは「自分で処置してOK」「そのまま作業を続けて大丈夫」と言われたら今度はライン外を呼ぶことなく作業を続行できます。
止める・呼ぶ・待つ実行後のフィードバックは作業者と異常処置者、両方にとってメリットが大きいです。
円滑な生産活動のためにも必ずフィードバックを受けることがおすすめ!
だつ帽の体験談
だつ帽の実体験を紹介
最後にだつ帽の体験談を紹介します。
だつ帽が組立ラインで作業を行っている最中、ふと足元を見るとそこにあってはいけない小さな部品が落ちていたのです。
この部品はだつ帽のラインで組み付けるものではなく、他の工場で組付けられた状態で入ってくるもので、そこに落ちているということは、何かの拍子で外れ、足元に落ちたということ。
あるべき部品がついていない状態で後工程へ流れた可能性が高い非常事態。
だつ帽はすぐさま作業を止めて、呼び出しボタンを押して異常処置者に報告、製造ライン全ストップ。
駆けつけた異常処置者に全てを報告。責任の所在を彼にパスしました。
後工程の製品を確認し、該当部品が見つかり不良品が市場に出ることはありませんでしたが、20分ほど時間を止めたのは正直恐怖でした。
責任の所在を自分で持たないという意味でも止める・呼ぶ・待つは重要性を実感した出来事でした。
「止める・呼ぶ・待つ」で責任を上司にパス
異常を報告をした後は、作業者ではなく異常処置者や班長、組長の責任に置いての判断になり、責任の所在も移ります。
責任をパスしなければ、何かあったときに、作業員がその責任を追及されます。
このようなことが起きると、期間工や工場派遣の作業者は次回の契約更新がされないなどの可能性もあり、作業者にとって、いいことはひとつもありません。
止める・呼ぶ・待つは自分を守るためにも超大事なのです。
止める・呼ぶ・待つは自分を守るためにも超大事!
自分の身を守るためにも「止める・呼ぶ・待つ」を徹底しましょう!
「止める・呼ぶ・待つ」は不良品を市場に出さない&自分の身を守るためにも超重要。
万が一不良を出して大事になったら仕事を失う可能性もゼロではありません。製品を買うお客様のため、会社のため、そして自分の身を守るためにも超重要な考え方です。
以上を感じたら「止める・呼ぶ・待つ」の徹底!
製造ラインを止めるのは多少の勇気がいりますが、少しでも異常を感じたら迷わず実行しましょう!
本日もご安全に!